Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんらん

親鸞

吉川 英治

Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme

Aozora Bunko

外へ出た。彼方を見、此方を見廻したが、もう兄のすがたは見えない。山門の方まで駈けてみる。そこにも見えないのである。

峰と峰とのあいだの空が研がれた鏡のように明るかった。寒さは宵とは比較にならない、この寒気を冒して、この深夜をこえて、兄は一体どこへ出て行ったのか。

翌る朝になってみると、兄は、自分のそばに法衣も解かずに寝ていた。眠る間があったのだろうか、さりげなく朝の食事はひとつ座に着いて喫している。

「兄君、ゆうべあれから、どこかへお出になりましたな」

「うむ、行った」それきりしか問わなかったし、それきりしか答えもしない。範宴はすぐ斎堂を立って、

「わしは、ずっと、黙想を日課にしておる。行室におるあいだは、入ってくれるな」といった。

昼間は、顔をあわす折もないし、夜はまた、ただ一人でどこかへ範宴が出て行ってしまう。一夜も、欠かした様子がない。

山へかくれた去年から今年への間に、範宴の心境は幾たびとなく苦悶のうちに転変していた。死を決して、食を断ったという噂も事実であろう。この寂土から現実の社会を思って、種々な自分を中心として渦まくものの声や相を、眼に見、耳に聞き、生きながら業火の中にあるような幾月の日も送っていたに違いない。