Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんらん

親鸞

吉川 英治

Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme

Aozora Bunko

法華経の声は、近づいてくる。

石垣をあがると、廟の廻廊に、金剛獅子の常明燈が、あたりを淡く照らしていて、その大屋根を圧している敏達帝の御陵のある冬山のあたりを、千鳥の影がかすめて行った。

廻廊の下をめぐって、法師は、御墳のある廟窟の方へまわった。もうそこへゆくと、身のしまるような寒烈な気と、神秘な闇がただよっていて、寺僧でも、それは何となく不気味だと常にいっている所である。

風雨に古びたまま、幾百年も手入れもしていない建物に、月の白い光が、扉の朽ちた四方の破れから刃のように中へさしこんでいた。

法師が、そっと覗いてみると、なるほど、瑯みたいに白く凍えきった若者が、孤寂として、中の床にひとりで端座しているのである。そして、彼の跫音も耳へは入らないらしく朗々と、法華経を誦しつづけていた。

「あ……。やはり範宴少納言であった……」法師はつぶやいて、そっと、跫音をしのばせながら、そのまま、寺の方へ帰って行った。

二

ここに参籠してから六日目の朝が白々と明けた。

二日め、三日めは、飢えと寒気に、肉体の苦痛がはなはだしかったが、きのうあたりからは、身心ともに痺れて生ける屍のような肉体の殻に、ただ、彼の意念の火が――生命の火だけが――赫々と求法の扉に向って燃えているのであった。