Japanische Klassiker mit Furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme
――自分の幸福は、頒けなければならないものだ。そして、世間の人がみな自分のような幸福を感じた時に、初めて自分も真から幸福になったといえるのだ。それまでは、小さな自己満足でしかない。――そんな小我の満足をきょうまで求めてきたのではなかった」
白河を過ぎると、いつか、右手の丘に岡崎の松ばやしが見えていた。善信は、久しぶりに帰る家と妻を見るまえに、自分の心をきびしく叱っていた。
二
「あっ、お師さまが」
「師の御房がお帰りなされた」草庵のうちにこの声が起ると、なぜかこの春の日を寂として沈んでいた空気が、いちどに爛漫と明るくなった。
わけても、その中で誰よりも、深刻なよろこびを、無表情に似た表情のうちにつつんでいる人が、裏方の玉日であることはいうまでもない。
旅すがたのまま、いちど持仏堂へ入り、やがて、静かに出てきた善信は、自分のまえに額ずいて、無事な帰りを祝う法弟たちに向って、
「留守中、御仏のおまもり、忝けなく思います」といった。
なにか、ずきんと胸の傷むように顔いろが、皆の面を横ぎった。
しかし、誰も口を切る者はなかった。――師の善信の旅の垢によごれた姿を仰いでも、そういう気持になれなかった。