Japanische Klassiker mit Furigana
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しんらん
親鸞
吉川 英治
Lesen Sie 親鸞 (しんらん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 566.138 Zeichen · 1127 Bildschirme
私たちは息をしている空骸です。これも、鹿ヶ谷のご説法でうかがったように、往生――往きて生きん――という道まで行かなければ、ほんとの生命は呼吸をして参りません」
「あなたは、そんなことを考えますか」
「考えます。――寝てもさめても」
「鈴虫さま」ひしと抱きしめて、その耳へ、松虫は熱い息でささやいた。
「ほんとに」
「え。ほんとに」
「逃げましょうか」
「…………」塗りぼねの妻戸の外に、さらさらと衣ずれの音が通った。後宮の夜を見まわる恐い老女官であろう。二人は、息がとまったように、じっと、眼をすくめていた。
「……誰にも覚られてはいけませんよ。隙を見て」
「え……」
「だから、泣かないで」ふっと、そこの灯りが消えると、松虫は跫音を忍ばせて、自分の部屋へ帰って眠った。
三
上皇が熊野へ行幸のあいだは、御所のお留守の者ばかりなので、参内する公卿もなかったし、公用もほとんどなかった。
「かかる折こそ」とばかり、舎人たちは、宵の早くから酒を持ち込んでいるし、上達部たちは、宴楽に耽けっているし、衛府の小者などは、御門が閉まると、交る交る町へ出ては、遊んで帰った。
今も、一人の衛府の者が、酒のにおいを隠して、どこからか戻ってきたが、彼が、衛府の溜りへ入りかけると行きちがいに、小門の外へ、すうっと出て行った人影がある。