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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
この衝立は、そも、誰の指図で出しなされた』
孫太夫は、べたっと、板敷へ両手をついて、
『おそれながら、申し上げまする。その衝立は、図柄が、宜しくないとのお叱りでござりますか、或は、位置の事でも』
『そちは、何者じゃ』
『納戸頭、奥田孫太夫と申す不束者にござります』
『又聞きでは、間違いが多い。主人を呼びなさい。内匠頭どのは、何うなされた』
『只今、申し伝えて居りまする』
『やれやれ……』
と、伸びをするように、白い眼を、じろじろと上に向けて、
『天井の塵もよう払ってないわ。かような、不作法な玄関へ、勅使をお迎えしたかと思うと、身の縮むほど畏れ多い』
呟いている足もとへ、駈けつけた内匠頭が、手をつかえた。
『何ぞ、不行届きでもございましたなれば、家来の落度は、内匠頭の不注意、お叱り置き下さいましょう』
『あ。……内匠頭どのか』
『御検分、御苦労にぞんじます』
『お許は、勅使の接待役、上野介などへ世辞はいらんことじゃ。所で、この衝立は、何と心得て出された。晴の御大礼、長途の勅使を寿ぎまつる大玄関に、墨絵のものを置くとは何という量見じゃの。なぜ、明るい彩画を出しなさらぬ』
『あいや、おことばでは御座るが、御老中土屋殿の御内意もあって』