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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
追討
『やったな』
と、抛られた者は、すぐ、彼の脚をつかんだ。
その顔も、その声も、作兵衛は普請場で見て知っていた。小野寺十内のせがれの幸右衛門である。一方の痩せ形で背のすらりとした浪人は、潮田又之丞だった。
又之丞は、背から組んだ。
しまった! ――と毛穴をよだてながら関口作兵衛の二度目にかけた技は効がなかった。幸右衛門に脚を刎ね上げられて、どたっと、横倒れに地ひびきを打つ。いちど、投げつけられた口惜しさに、幸右衛門は、馬乗りにのしかかって、喉をしめつけた。
追討
『幸右衛門、そう撲るな、死んでしまうぞ』
『ふとい奴だ』
あらい息で――
『ふだんから、どうも、ただの左官手伝いではないと思っていたのだ。潮田、下緒を貸し給え』
『縛るか』
『その上でだ――』
関口作兵衛の両手をぎりぎり捲きつけて、
『――やッ、今、額堂のうえでこいつの見た紙片のような物はどうしたか』
『いや、俺が持っている』
潮田又之丞は、もうその紙片の皺をのばして、星明りで読もうとしていた。
『見ろ、幸右衛門』
『ウム……これだもの』
――ぐっと、作兵衛の額を睨めつけて、
『貴様、誰に頼まれて、この山科へ参ったか』