轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

『とに角、出かけよう』

幸右衛門は、家へ入って、老母に何か告げていた。摂州萱野村といえばそう遠くはない。これから夜どおし歩けば明日の午頃には着く。

空は、なま暖く曇っている、念の為に、雨合羽に笠を持った。そして二人が、二条通りの寺町の浪宅を出てゆくと、

『おう、潮田』

と、誰か呼びかける。

振り向いてみると、先刻、本願寺御房の前でわかれた武林唯七。

『見ろ、これだろう』

掴んでいるまるい物を、闇の中にさしあげて見せた。まだ血しおの滴っている生首だった。又之丞がいちど見遁してやった千坂兵部の隠密関口作兵衛の首なのである。

『手強かった、さすがに、千坂が選りぬいてよこした隠密、おれも、ここへ薄傷を負った』

唯七は、肱をめくって見せた。潮田も、小野寺も、眉をひそめた。

『つまらぬ真似をいたすなと、たった今、十内老人から叱られたところだ。寺の藪へでも抛ってしまえ』

『十内老人が? ……あの老人は、何事にも、若い者より先立って、気慨の強いのでは負けをとらぬ方だのに』

『だが、こう昨今のように、うるさく敵が尾き纒うては、それに対して、いちいち手出しは却って不得策と老人は云うのだ。