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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

以後、慎めと、貴様の分まで叱られて置いた』

『ふム……そうか』

急に、掴んでいる生首が重くなったように、唯七は、捨場所をさがした。寺の破れ垣からそれを竹藪へ抛り込むと、がさっと、闇が鳴った。

『ところで、貴公達は?』

『急に、旅立ちだ』

『大石殿をお迎えにか』

『いや、萱野三平が自害したという書面が参ったので』

『萱野が? ……あの三平がか?』

唯七は、事情を聞いて、自分も共に行こうと云う。その儘の姿で一緒に淀まで急いだ。ちょうど、夜の仕舞船に間にあって、三名は、苫を被った。揺り起されたのはもう朝だった。予定よりもすこし早めに、萱野村の萱野七郎左衛門の邸へ着く。

『元浅野家の家来、御子息三平殿の旧友共でござる、不慮の御凶事を承わって参りました。三平殿の厳父七郎左衛門殿まで、お取次をねがいたい』

玄関に立って、こう各※(二の字点、1-2-22)の姓名を告げる。

家のうちは、何か、取りこんでいるらしかった。――後で聞けば、折も折、その日は、三平が死んで百ヵ日目であった。

『どうぞ』

と、奥へ通される。

旧家の郷士という家構え、うす暗い小座敷に、悄然と、肩を落としている窶れた老武士があった、七郎左衛門である。