轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
たまらない空虚が、どの部屋をも冷々とさせている。
『誰じゃ、琴の音は』
『お軽どのでござります……』
『そうか』
棟の離れている廊架づたいの一室へ父のすがたは背を向けて入って行った。主税は、琴の音がやんだなと思いながら、自分の机へもどった。
『お軽、さびしかろ』
内蔵助は、静かに坐って、
『茶を』
と云った。
『はい』
次の間の風呂先の釜に向っているお軽のうしろ姿を、内蔵助は、凝と見つめた。妻のない家に際立つ美しさである。彼の心は、ふと、彼らしくもない和やかな波紋をゆるがせていた。
『お気に入りますやら……』
怖々と茶をおく。――その指先には、祇園の女や伏見には見あたらない鮮麗な色があった。
『うまい……』
『おつかれの時には、わけて』
『わるい疲れじゃの』
『いいえ』
なんの意味ともなく、お軽は微かに顔をふる――この娘は、どういう気持でここへ来ているのだろうか。むろん、兄の一文字屋次郎兵衛からも、小山や進藤からも、云いふくめられた事があるであろうが、少しもそういう不安も怖れも抱いている気色がない。何か、安心しきっている姿だ。或は留守の間に、主税から、うすうす自分の性格とか、家庭の事情とかを聞かされ、ほんの留守番のような気持でいるのかも知れない。