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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
というて、衣食の途を求めるには、世間の中に住まねばならず』
『江戸では、吉原なども、御見物なされましたか』
『祇園、伏見でもはや討死、江戸落ちと相成ってからは、見らるる通りな浪宅の侘、さような景気はさらさらない。……はははは、これからは、その侘を生かして、ちと茶道でもやろうかと存じておるが、茶も近頃は金が要るので』
『江戸の上下の風俗を、何と御覧ぜられましたか』
『いやもう、華奢な、派手ずくめな、何をやるにも金らしい。金、金、金の世の中じゃ』
『こう爛熟きった文化というものが、いつ迄、この儘で栄えてゆきましょうか』
『さ……どういうものじゃやら。とんと、そういう、むずかしい事は』
『私は思うのです。淫風佚楽、上下共に、この悪世相へ眼をさまさないと、今に何か天譴が下るのではないかと。――痛切に、今の人間どもが、憂えられる。お犬様の下におかれ、畜生以下にされているのも仕方がない。罪は人間自体にあるんです。お犬様自体は、何も知りはしません』
『む……。ちとわしなども耳が痛いの』
『いやいや、あなたのみじゃない。幕閣の吏員も、町人たちも、侍も、想像外に、腐えきっております。