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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
『あんたかの、茶を習いたいと云うのは』
宗※(「彳+編のつくり」の「戸」に代えて「戸の旧字」、第3水準1-84-34)は、もう老齢だった。
『左様でござります』
と、低く辞儀をしている間に、大高源吾は、この茶宗匠も、この頃多い銅臭の風流人であることを見ていた。
彼は、町人に装っていた。衣服とか、持物とかに、大店の旦那らしい鷹揚さを見せて、言葉だけを低く云った。
『京都の織物問屋で、西陣屋利兵衛と申しますので。はい、実は、さるお大名方へお取立をいただいて、屡御当地へ出てまいりまするので、商用とては、ほんのわずか、逗留中は、とかく体をもて余しまするので、御高名をお慕い申して、御指南を仰ぎたいと……実はかような考えで参りました訳でござりますが』
『では、多少の心得は、あるのじゃな』
『――と申す程ではございませぬが』
『まあ、習ってみなさるがよい』
『何分ともに』
束脩としての包金、上に、金千疋と書いたのをさし出すと、
『行き届いた事で』
と、無造作に受け取った。
(まず――)
と、大高源吾は、ほっと胸を一撫でした心地だった。それからも、訪うたびに、心づけを贈った。何かにつけて、金銀には目もくれないふうを相手の感じに入れて、ぼつぼつと、吉良家の茶会のもようなどを聞き入れた。