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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
勅使、院使の三卿は、間もなく登城して見える。
五老中、揃って出て、
『不慮の椿事、出来いたし、勅使をお迎え申し奉る大礼に、何かの御不審もござりましょうが、平にお見のがしの程を』
恐縮して、謝意をのべた。
柳原前大納言は、うなずいて、
『何やら、お取り混みの由。殿中禁犯の者とは、何人でござりますな』
『内匠頭長矩と申す者』
『武家と武家の事、殿中での刃傷も、ままある事でおざろうな』
『ない事ではございませぬが、大紋を着用する式日に於て、かかる刃傷沙汰は、鎌倉将軍以来、殿中はおろか、城外にても、まったく破例の事にござります』
『して、処罰は、何う召されるか』
『刃の鯉口を切っても、家名断絶の掟にはござりますが、まだ、内匠頭の儀は、いかが相成りますやら』
秋元但馬守を初め五老中のうちには、勅使か院使か、三卿のうちの一名が、何か一言でも救いのことばを洩らしてくれたならば、内匠頭の罪を軽くすることが出来るが――と心で祈っていたが、高野中納言も、清閑寺大納言も、
『さてさて、武家法度は、きびしいものでござるのう』
と、好奇な眼をして、聞いているだけであった。
勅答延期の事は、