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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

数右衛門のほうは、武装していただけ勝目があった。平八郎の小袖は、刻まれるように破れてゆき、幾太刀かの手傷がみな血を噴いた。

ところへ、間瀬孫九郎と、奥田貞右衛門が、

『――数右、助けるぞっ』

左右から、槍!

平八郎は、咄嗟、右側から迫った間瀬の槍を払って、だッと、屋内へ足を退く。

ちょうど、その上で、一人の敵とわたり合っていた木村岡右衛門が、平八郎と背中あわせにぶつかって、

『吉良方かっ』

と、前の敵へ向けていた刀で、平八郎の腰を撲り、自分も、片足立ちに蹌めいて、隅の板壁へ勢いよく体をぶつけた。

平八郎は大流元へ辷り落ちていた。間瀬孫九郎が、そこへ突き出した槍の元を手繰って一方の手に太刀をかざし、再び外へおどり出して来た元気さには、敵ながら、数右衛門も、貞右衛門も、

(天晴!)

と云ってやりたいくらいだった。

然しもう、腰をなぐられた一太刀がこたえていた。躍っては出たが、さしもの平八郎もそのまま大地へ転がってしまう。

――胸いたへ一槍、真額へ一太刀と、不破、奥田の打撃が加えられたが、それでもまだ小林平八郎は、仰向けに仆れながら、太刀を振り足業を働かせて、