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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

時計の間の、やぐら時計は、刻々と、森厳な生唾をのませていた。

やがて、分銅鎖が、ギ、ギ、ギ、ギ、ギ……

七刻を告げて鳴る。

『土屋相模守さま。お召です』

『あ』

立つと、すぐ、

『稲葉丹後守さま、阿部豊後守さま』

『はっ』

『お召です! 急いで』

続いて、取次が、

『井上大和守様、御前へ』

と、呼び立てる。

君令は、瞬くまに伝わって行く。

まず第一に、

『浅野内匠頭事、お沙汰あるまで、田村右京太夫方へお預け』

次には、

『吉良上野介事、致し方、神妙なるに依って、構いなく、引き取って、療養仰せつけらる』

と云う沙汰触れであった。

なお又、刃傷の節、上野介を介抱した大友近江守も、同様お構いなし。内匠頭を組みとめた梶川与三兵衛には、前例に依って、新知五百石を賞賜せられる――という事も次々に触れ出された。

その梶川と一緒になって、内匠頭の刃を奪りあげたという偶然にも些細な事で、お坊主の関久和へも、銀子三十枚の賞賜が下がった。

『久和、うまくやったな』

『久和、奢ってもよいぞ』

『久和、今日は、二度びっくりだろう』

お坊主仲間の羨望に取り囲まれて、彼は意外な福運に相好をくずしていたが、より以上の面目をほどこして、一躍千二百石の大身になった梶川与三兵衛は、どうしたのか、憂鬱な顔を、其処らにちらりと見せたきりで、桂昌院の御用部屋にも、姿