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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
すると、前や後で、
『自業自得じゃっ』
『あたりまえだわっ』
唾するように、口々で猛る。
藤左衛門は、動じない姿だった。無智な者ほど純真なことを信じていた。諭すように、群集の顔いろを計って云い足した。
『後の御成敗は、偏に、お上様のお裁きにあろう。家来や、領民同士が、私闘をしたら、限りもなく、血で血を洗うことになる。――それでも、これが他の場合なら、おぬし達の言い分にまかせ、この街道を戻れというなら戻りもしようし、又、手をついて通れというなら手もつこう。然し、君公の大変を身に帯び、一藩の大事を担って使する火急の途中、しかも、事を構えた相手方の領民に阻まれて道を迂回したと聞えては、天下の衆に、又国許の人々に、われ等何として面が立とう。赤穂藩としての面目も欠く。されば、武士として一命を賭しても、ここは一歩も退けぬ。強って、通さぬとあれば、刀にかけて通るほかはない。然しそうしては、この度の大変を、いやがうえにも事大きくして、世上に嗤いの種を蒔くばかりだ。聞き分けてくれい』
『勝手なこと、云いさらすわっ』
『其方共とて、無益な怪我をしてもつまるまいが』
『脅しくさるぞ。