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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
加賀絹五十匹
黄金百枚
水墨山水一幅
目録を手に、現品を展げて見較べながら、
『ほう。……さすがにな』
と、皺の中で、針のように細い眼が、キラと悦に入っていた。
そこへ、踵を次いで、浅野家からの使者という取次に、
『鄭重に、お通しいたしておけやい。――これこれ、浅野家は、左京介殿以上の御大身であるぞよ。粗略なく、褥を更え、茶器も、よいのを出せ』
それから又、用人の左右田孫兵衛には、
『むろん、酒肴の用意。わしも、衣服を更えて出よう。その間、宮内を出して、よきように、お執り持をいたせ』
こういう客迎えは、吉良家ばかりではない。高家衆は、それが収入で、職業なのだ。家老も用人も、それには万端手馴れている。
殊に上野介は、先に見えた訪問よりも、播州赤穂の城主という裕福家の方に、多分な楽しみを持っていた。
(伊予吉田の伊達ですら、これ位な音物をもって来た。とすると、浅野も、その辺は、あらかじめ当っておいて、後から使者をよこしたのだろう……)
すると、何れ位な気前を見せて来るか。――上野介は、想像がつかない程な期待をして、いそいそと、客間の方へ出て行った。
所が、応対は永くなかった。