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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
中興の先祖には、家康公の大伯母であった吉良義安などもあるし、名門には違いなかった。そして当主の役は、高家筆頭、四位の少将、禄高四千二百石、位階は高いし、特殊な家柄と職権をもっているので、三百諸侯も、
(吉良に、拗ねられては)
と、一目措いている風があった。
客間から頻りと、手が鳴った。
『酒肴の支度をせい』
と、主が云う。
使者が、立ちかけると、
『まあ、まあ、心祝いでござる』
茶を代えろ、酒はまだかと、歓待に忙しかった。
馳走酒に、微酔した使者が、辞して、玄関へ出ると、上野介自身が、そこまで送って来て、
『何やら、種々とお心入れの由じゃが、痛み入ってござる。堂上方の式法、礼儀、故実などは、それを御指南するのも、お叱りするのも、高家の役目じゃ、何なりと、遠慮のうお尋ねあるがよい。上野介が存ずるだけはお教え申そう。――まだお目にかからぬが、左京介殿へも、よろしゅう、伝えられい』
帰って行くその使者が、呉服橋あたりで、すれ交ったであろう頃に、また、吉良家の門に、浅野家の使者が訪れた。
上野介は、居間にかくれて、たった今、伊達左京介の使が置いて行った音物を開いていた。