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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
挨拶がわりに、九郎兵衛は、個人的に、ぼつぼつ言って歩いた。
『どうじゃな、まだ、死ぬが忠義とお考えかの。弾みなら、誰でも死ねるが――』
答えない者もあるし、遽に、今日は九郎兵衛に同意を示す者もあった。
公金の分配でも、だいぶ異論が闘わされた。
その割当ては、
『身分の高下なく、人数割に』
という内蔵助の意向であったが、九郎兵衛を始め、外村源左衛門、岡林朴之助、伊藤五左衛門、玉虫七郎右衛門などの組頭たちが、
『知行割に』
と主張して譲らない。
内蔵助の言い分では、大身には、武器家財を売っても余裕がある。小身の者ほど、こういうときは、厚くしてやるのが目上の義務である――という理由をとり、九郎兵衛は、大身には眷族の負担がある。又、軽輩のようにすぐ身の処置もできぬ、社会に対して、旧家の面目も考慮しなければならない、等々、幾らでも反説をあげてくるので、これも果しがなかった。結局「高知減し」というところで妥協がついた。
知行割でゆくと、百石について、十八両当の分配であったから、千石では百八十両になるが「高知減し」は、百石を増して禄が上へのぼる毎に、二両宛の減配をする。