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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
つまり二百石からは十六両、三百石となれば十四両という計算に、上を薄くしたのである。あくまで、下に厚く、上に薄く、というのが内蔵助の主張だった。
そのほか、浅野家菩提所の寄進金と、亡君の内室瑤泉院化粧料(輿入れの折の持参金)とはべつに手をふれずにわけてある。
内蔵助は、自分の分配金には、目もくれなかった。
彼はひそかに、
『これでおよそ篩がかかった』
と、見た。
金を持ってみてから今日帰る人々が、またどの程度に変化を見せるか。彼は、能動的になんの策もしていないようでいて、いつのまにか、自分の手に、もう二十名近い者の血判した誓紙を納めていた。
神文の表には、殉死とも、籠城とも、約束してなかった。ただ、進退一致だった。――内蔵助の料簡次第にと、認めてある。
いつのまに、彼がそんな誓紙を語り、誓紙を手に納めていたのか、知る者は、彼と、それを差出した者だけだった。
(まだ、人間はいる筈だ)
内蔵助はこう見ている。
然し、見わけ難いのが人間だ。九郎兵衛のような利巧者は語るに足らない。すべて理論家はその場だけの者が多い。感激の人生を知らないからだ。と云って、感激を外にあらわし過ぎているのもあぶないと思う。