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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
『やはり、世上の噂のように、彼等は、何かたくらむつもりか』
『俺は、そうと見た。――表面、服従を装うてはいるが』
『だが、藩地を召上げられ、利害をも離れた後まで、その結束が続くかどうか?』
『後は、人間と人間の結びだけだが、今度の開城の手際を見ると、あの三百余名の浪人中に、ひとりの偉きな人物のいることが分った。それが存在する以上、内匠頭は死んでも、藩地は召上げられても、赤穂は滅亡したとはいえぬ』
『赤穂での人物といえば、奥野将監か、大野九郎兵衛か。――それとも原惣右衛門』
『誰もが、そう思っていた。ところが、結果を見ると、すべてが、常々凡物といわれていた大石内蔵助という者の力で動いて来たことがわかる。あれは、千坂兵部様も、気をつけておれと云われたが、確かに、これから眼の離せない人物だと思う』
『して、その内蔵助は、どこへ退去いたしたか』
『やがて、京都の山科とかへ移るつもりで、荷拵えまでしているが、先月頃から、左の腕に疔を病んで大熱を発したらしく、まだ、赤穂の城下から少し離れた尾崎村の八助の家で療治しておる。――で拙者も、ここらで一先ず千坂様へ復命して置こうと考え、赤穂を引き揚げて来た途中なのだ』