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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
潮田は、顔を横に振って、幸右衛門の驚きをたしなめた。
武林も、気付かないのではない、早くもちらと眼を向けていたのだが、乗合い客の多い胴の間に、その内蔵助は居ることであるし、又、姓名も池田久右衛門と変えていて、他に、ふしぎな道連れが多いので、言葉をかけず、黙って見ていたのである。
『知らぬ顔をしていたがよい。……大夫も眼を反らした、声をかけてよいなら、大石殿から何とか云おう』
又之丞は、横を向いて、囁いた。
唯七は、舌打ちして、
『あの妓たちは、みな、大夫の連れだろうか』
『そうとみえる……』
『大夫の側に、へばりついている、女とも男ともわからぬ奴は何者だ?』
『歌舞伎若衆』
『歌舞伎者はわかっているが……』
『京芝居で有名な瀬川竹之丞ではないか。乗合いの者が、眼をそばだてて囁いておる』
『あれが、陰間の竹之丞か。大夫も、ちと、憚りが無い!』
唯七はペッと水面へ生唾を吐いて、苦々しく、見ぬ振りを装っていた。
酔大尽
内蔵助がこの頃、伏見の撞木町へ足を運ぶとか、島原へ遊びに通うているとかいう噂は、もう最近の事ではなく、去年江戸表へ下向して帰って来ると、間もなく、酒の量が上り出して、