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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

丹前姿の中年者、茶屋の仲居、お供の奴、町人、角前髪、小女、坊さん、いい機嫌の武家――

踊りの輪は、音頭取りの縁台のまわりを道念唄にあわせ、手振り、足振り、ゆるやかに描いて廻った。

『もし、しょう様! しょう様!』

笹屋の仲居であった。ばたばたと、その輪を横切って、音頭取りの男のそばへ寄って、何か囁くと、

『お、お。そうか』

何か頷いて、

『すけ殿、たんすい殿。ちと急用、早うござれ』

と、音頭取りは、縁台から飛び降りて、駈け出した。

大高源吾だった。

すけ殿と呼ばれた富森助右衛門、たんすい殿と呼ばれた村松三太夫も、踊りの輪から抜け出して、源吾の後を追って行った。

『喧嘩か』

と、人々は、振り向いたが、もう影は見えない。

廓の総門を、出るとすぐ、

『各※(二の字点、1-2-22)』

『お』

葉柳の暗い蔭――

小野寺十内の姿が、ちらと見え、手をあげてさし招いた。

三名に、何か囁く。

源吾は、憂わしげに、

『――では、御意中を』

『されば、追いついて、よう、告げて欲しい』

『委細、承知』

と、道をながめて、

『して、その不破、原、御両所の帰られた行く先は』

『さ、それが知れぬ。