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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

医師の隆円、村松喜兵衛。

上田屋源兵衛の片岡源五右衛門。

そのほか、岡島八十右衛門もいるし、武林唯七、小野寺の伜幸右衛門なども顔をならべているのである。

『中座、失礼を』

五兵衛の前原伊助が、やがて、席へ帰って来て、苦笑しながら、母屋の騒ぎの何事でもないことを告げると、

『はははは、そんな他愛のない事か』

皆、誘われて笑った。

安兵衛は、盆の上から煎餅の一枚を取って折りながら、

『矢頭、神崎のふたりは、まだ見えぬようだが』

『そうだ、誰よりも近いのに――』

各が、顔を見合って、

『前原、来ると云ったのか』

『たしかに、見えると云ったので。――それもつい夕刻の事』

『はてな?』

『覗いて来ましょうか』

手代すがたの倉橋伝助が立ちかけると、

『まあ、もう少し、待ってみては何うか。――あまりこの蔵から出入りするのは好ましくないからの』

村松喜兵衛のことばであった。

もっともと――人々は頷きを見せた。この蔵には月二回ほどずつ集まって、吉良邸の事で探り得たことをお互いに談し合うことにしているのだった。こうしては何うか、こういう策は如何かと、それに就いての協議もやって来た。