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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

『辰の野郎が、あまり分らねえことをいうもんですから』

『なんだ汝が』

『まあ、もう止せ止せ。……どうか旦那、御心配なく、大人しく遊んでおりますから、もう暫く、ここを』

五兵衛の前原伊助は、そういう連中の顔を見まわして、にやにや苦笑した。憎まれない顔ばかりである。

『ようございますとも、御ゆっくりお使いなさい。けれど、余り騒ぎが大きいと、いくら自身番でも、お鮨じゃ黙っていられなくなりますからね』

『まったくだ、お宅に迷惑でもかけたひにや、俺たち首を縊っても、申しわけがねえっていうもんだ』

『まだ、あちらの無尽講も、話し込んでおりますから、どうか御ゆっくりと』

五兵衛はそう云って、籾蔵のほうへ戻って行った。

階下には、米搗臼だの、篩だの奥には又ぎっしり俵が積み込んであるが、梯子を上ると、四坪ほどの床に筵が敷いてあって、行燈もある、火鉢もある、茶も沸く。

凝と、その灯影を囲んで、五兵衛のもどるまで、客は黙っていた。――客というのは、

脇屋新兵衛とよぶ、大高源吾。

長江長左衛門と仮名する、堀部安兵衛。

ここの手代となっている、倉橋伝助。

内藤十郎左と称している、磯貝十郎左衛門。