轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
ここで尾を出してはと、いや、姓名を聞え上げる程な者でござらぬ――と軽く逃げて外してしまったのだ』
『ははは。――そこで慥と見たのか、吉良殿の顔を』
『いや、見られないものだ。よほど、落着き払って見上げたつもりだったが、ほんのわずかな間だったし、駕籠の引戸は細目にしか開けない。――ただ白髪に痩せた鬢のあたりと、絖の襟元をちらと見たに過ぎなかった。それに、その白髪首が眼にとまると共に、かっと胸のうちが煮えて、飛びかかって行きたいような気持に駆られてしまい、後で思うと、はっきりした覚えは残っていないような気がする』
『吉良殿、その折は、どこへの他出か』
『上杉家の中屋敷――帰りも本所までも尾けて見届けたが、どうも、それは空駕籠であったらしい』
『その策があぶない。居るかと思えば不在、不在かと思えば居る』
『何とか、内部が探れぬものかな』
『磯貝には、先行すこし自信があるそうだが、まだ、明言は出来んとか云っておる』
『え、十郎左が』
と、皆の目が、席の端に居るか居ないかのように黙っていた彼のほうへ注がれた。
笑えぬ二人
磯貝十郎左衛門は、謹直そのもののような青年だった。同時に、