轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

俺の今の気持も、正しくそこにある。自分でも不思議なくらいに思えるのだ。死ぬ日が、少しも嫌でない。――この陰鬱な屋敷にいる俺でさえそうだもの、まして、赤穂の浪士たちの身になれば、このお邸の門は、仏者の説く往生極楽の門にひとしい。ここを乗り越えた時、彼等はほんとに生きた事になれるのだ』

丈八は、自分が云いに来た事を、みんな一学から云われてしまったような気がした。彼が直接命令をうけて、常に接近している千坂兵部の観察も、一学の覚悟と、ほぼ近いものがある。――遂に何うしても最後の凶事は避け難い――と云うところへ兵部の考えも、この夏頃から帰着していた。

それに対して、上杉家として、当然、もっと積極的な対策のない筈はない。例えば、世間で臆測しているように、上野介の身を、米沢へ移してしまうとか、麻布の上屋敷へ匿うとか、或は、逆襲的に赤穂方の領袖たちの三、四名を暗殺してしまうとか。

(ならぬ!)

誰が、そう云ったような策を持って行っても、兵部は、顔を横に振るだけであった。

その深い意志の底には――(天意におまかせする)と云う冷静なものと、(吉良家を救うために、上杉家の社稷を危くするような冒険は、上杉家の重臣として、自分には、断じて行えない)と云う、こう二つの信念が、巌のように坐っている為であるらしかった。