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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

『よしっ』

内蔵助のそばへ寄って、ふた言三言、何かささやくとすぐ、四十七名は東の表門組と、西の裏門組との二手に分けられた。

各※(二の字点、1-2-22)の赴く部署は前から決っていた事である。

表門は大石内蔵助の指揮。

西の裏門は、主税良金を大将として、副将の吉田忠左衛門はその後見役。――さっと身を沈めるような形をとると、総勢は秩序ある分列を作って、一方は裏門へ、一方は表門へ。

ど、ど、ど、どっ!

雪の落ちる音だった。それと同時に、裏門からも、表門からも、塀のみねへ、樹の梢へ、猿のように攣じ登る人影が鮮かに見えた。

どどどどっ――

頻りに雪は大地を震わして落ちた。吉良上野介の深殿を繞る庭の樹々は悉く雪を散らして戦慄した。――しかも、まだ屋敷のうちでは気がついた気配もないのである。

表門へ掛けた梯子の突端が、その光景を睨まえているかのような月を貫いていた。第一にその光から屋根廂へ飛び移って行ったのは、大高源吾であった。

『御免っ』

と、岡島八十右衛門と先を争って、二番乗りは吉田沢右衛門、どうんと門内へ地ひびきさせて跳び降りた。

『あぶないぞ、御老人』

三番乗の八十右衛門が、こう云って、自分の下から攀じ登って来る堀部弥兵衛へ手をのばした。