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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

『……ちと寒くなったな。更けて来たとみえる』

『酒も醒めかけて来たし』

『寝もせずに見廻っている笠原七次郎には済まないが、やはり、この酒は飲むとするか。――丈八、そこの燗徳利を取ってくれ』

『待て、炭もつがなければ、銅壺の湯も、ちと冷め加減』

飲みほして、二人はなお語りつづけていたが、夜半になると、さすがに何っ方からともなく口を緘んで、まだ酒も少し残っていたが、脚だけを夜具に入れて、手枕のまま寝入ってしまった。

ちょうど二人で二升近い酒。

酔わないつもりでも、かなり腸は酒浸しになっていた。大きな鼾声のうちに行燈もいつか消えてしまう。

そして、七刻(午前四時)は来たのであった。

――そのすこし前に、木村丈八は寝がえりを打っていた。行燈が消えているので、手探りで台所のほうへ出て行ったのが見えた。喉が渇いたものとみえ、水桶の竹柄杓をさぐっていたが、桶の水もカンカンに凍っているのである。丈八は、柄杓で氷を割っていた。

ガバッと、その途端に、闇の中で清水一学が刎ね起きていた。

『丈八つ。……今の物音は?』

『おれだ……おれが手桶の氷を砕いたのだ』

『何処に耳をつけているのだ。