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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
謙信以来、上杉家といえば、武道をもって誇る家がらでもあったし、多分に、事を好みたがる血気者も藩邸には多いのだった。これを黙視しては、上杉家の名分も立たないし、自分等の武士も立たないと息まくのである。
もう、門の外にも、人数が溢れ出していた。すると、雪を蹴立てて、藩邸の門前に駈けつけた老武士と、ほかにもう一名の、二頭の騎馬があった。
白髪の人は、老臣の千坂兵部であり、後に尾いて来たのは木村丈八だった。
武装して門前に騒いでいる藩士たちの中へ兵部は、どっと駒を入れて、
『何事じゃっ、その態は』
と、云った。
駒を飛び降りて、
『わしの許さぬうちに、一名でも、吉良様の変事へ駈けつけることは相成らぬぞ。――入れ、門内へ戻れ』
『いや、君命ですっ』
誰か云い返すと、
『だまれっ』
大手をひろげて、兵部は、大勢を押し返しながら云った。
『赤穂のごとき浪人の群なら知らぬこと、そちたちの行動は、上杉家の行動じゃ。由来、一藩が大挙して兵器を持つ場合は、必ず太守の御前で、支藩、重臣たちの意見を述べ、その評定によって命令の降ることになっておる。かりそめにも千坂家は、広部、沢根と共に上杉家の三家と称ばれ、謙信公以来、代々評定席の上席にも坐る身である。