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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
と、飯炊き僧は、則地にも教えた。
則地も、それは初耳だというように、覗きに行ったが、戻って来て、大笑いしながら云った。
『ハハハハハ、あれは唐の薛調だよ』
『なんですか、薛調というのは』
『いや、衛かも知れんな』
『なんです、なんです? 衛※(「王+介」、第3水準1-87-85)とか、薛調とかいうのは。そう、気をもたせていないで、教えてくださいな』
『支那の書物にあるんだよ』
『ヘエ?』
『――唐の薛調、姿貌端麗なり。人よんで生菩薩という。――衛※(「王+介」、第3水準1-87-85)また美容秀麗なり、予章にしたごうて都下にきたる。人聞きおよびて、観る者、道に塞がりて牆のごとし。――後、衛※(「王+介」、第3水準1-87-85)、病んで死する時、人みな謂えらく、都人、衛※(「王+介」、第3水準1-87-85)を看殺すと。……つまり、あまり美しかったので、人の眼が、看殺しにしたというのだ』
『それは、女ですか、男ですか』
『女のきれいなのは、さほどでもないさ。男だったのだ』
『ヘエ……? じゃあ、あの人、男でしょうか』
『矢頭右衛門七と仰しゃる人だ。当年、十七歳とか云っていた』