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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

『……かわいそうな犠牲だ。ちょっと、おぬしが行ってやって、やさしい言葉でもかけてやればいいが、側を通った母御の家にさえ寄らなかった程の気持だから……そんな事はすすめられもせぬ。……だが、十郎左、右衛門七のお粂も、あの後気が狂って、街をさまようているそうな。右衛門七には、まだ女ごころが分らぬから、ああして、こだわりもなく忘れているらしいが……十郎左、おぬしには、それができまい』

『前原』

『なんだ』

『わが儘をいうようだが、ほかの友達が、何を密かに話しているかと怪しむといけない。彼っ方の広間へ行って、みんなと笑っていてくれ』

『……ム、それもそうだな』

『ちょっと、頭が痛いので、暫く、ここで横になっていたい。……だが、わしも本堂のほうへすぐに行く。あの賑やかな笑い声の中へ入りに行くよ。……な、前原』

そう云いながら、十郎左は、雪明りの障子のほうへ向って、ごろりと横になった。

細川家義士夜話

復讐正道

『助右どの、大目附のお邸は、確か此処だのう』

『そうです。てまえが先に訪れましょう』

富森助右衛門と、吉田忠左衛門の二人であった。

討入装束のままで、手には大身の槍を提げていた。