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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

もはや不用になりました故、どこぞお取捨てくだされい』

と頼んだ。

その間に、仙石伯耆守は、供揃いも慌ただしく、大目附の役人として、城府へ、駕を急がせていた。

×       ×

×       ×

ちょうどその日は、諸侯の登城日に当っていた。

夜明け方の大事件は、当然、ここの政庁につよい衝動を与えていた。殿中の各お役部屋は、十四年三月十四日の刃傷事件の当日を忍ばせるような空気であった。

――だが、同じ緊張しきった幕廷の物々しさにしても、内匠頭刃傷の時は、誰の眉にも暗い悲痛な影が漲っていたが、今日の混雑のうちには、何処となく人生の明るさを見ているような明るさがあった。

『聞けば、今暁、この泰平の世に、お膝下に於いて、不祥な事件が起ったそうな』

と、口では皆、憂わしげに云っているが――幕廷の閣員としてはそう云っているのだが――心のうちでは何処となく、

(まだ士風は廃りきったとは云えない。武士道は地に墜ちていない!)

と、意を強うしたふうが、何の部屋の諸侯の眉宇にも見えたのだった。

刃傷事件の折には、内匠頭の処罰に、ひどく急で、感情的でさえあった将軍家の綱吉でさえ、