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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

その吉右衛門というのは、斎田さんの知人かね』

『わしの甥が姫路藩本多様に御奉公している。その姫路藩にやはり吉田様の御親類が仕えているので、深い懇意と云うではないが、甥の家でよう茶を飲んで話し合った事がある。その吉右だとすれば、おとといの晩の事やら、赤穂の御浪人衆の始末やらを聞きたいと思ってのう』

――すると玄関のほうに、用人の落合与左衛門が、今、取次の者から受取った大封じの書状を持って佇みながら、

『これ、これ。使の者はいかが致した。――今これを持ってみえた使の男は』

二人が、振顧って、

『あ、その使の男は、もう立ち帰りましてございますが』

『ヤ、帰ってしもうたか? ……。種々、訊ねたい事もあったのに……瑤泉院様にも落胆なされる事であろう』

『じゃあ、今のはやはり、赤穂の御浪人方からの使でございましたか』

『封の表には、京都瑞光院と寺の名が認めてあったが、中を開くと、内蔵助殿からこちらの瑤泉院様へ宛てた密封の物。……それは何か知らぬが、内蔵助殿の使とあれば、討入前後の仔細も詳しゅう知っていようと、あわててこれへ出て来たのだ』

と、与左衛門は、頻りにその機を逸した事を悔んでいたが、ふと気づいて、