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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

二人の前へ差し出したのを読むと、

覚

一、首      一つ

一、紙包     一つ

右之通り慥に請取申候    以上

吉良左兵衛内

左右田孫兵衛

斎藤宮内

泉岳寺御使僧

石獅僧

一呑僧

『それで宜しゅうござるか』

と、ここに名の記してある家老の左右田孫兵衛が云う。この家老も、微傷を負った事を示すように、左の手首を白布で巻いていたが、何となくそれが可笑く見えて、顔つきと手頸の繃帯がうつろわない。

『よろしゅうござる。役目の事故、御回向いたしませぬ。後々御懇に』

苦笑しながら、二人は外へ出て、何かしらほっとして、夜空の星を仰いだ。

人を裁く人

毎日が賽日のように、泉岳寺の門前はあれ以来雑閙した。武家町人ばかりでなく、近郷の百姓だの、東海道から入って来る旅客までが、駕や馬をそこに止める。

赤穂の浪士達四十六名は、もう四家へお預けとなって、ここには疾うにいないのに、浪士達の残して行った武器でもあれば見たいとか、内匠頭の墓地を今更のように見物してゆくとか、中には住職や番僧に面会を求めて、

『討入の翌日、義士の方々は、どんな態度でおられたか、どう云う話を交しておられたか、内蔵助殿という人物は、何歳ぐらいに成られるか、主税殿は美少年だと聞いたが左様でござるか』