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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
『気が合うというものだろう。三百五十石の小身から、諸侯の頭を抑える御側用人まで出世した出羽守と、高家の吉良とは、予々、親しい交際いもして居るし、どこか、一脈通じるところがある』
『今日の事件で、出羽守の庇い立ては、ちと目に余る……。先刻も、屏風越しに、吉良へ何やら云い居った』
『御政道を私に、うごかすものではないか』
『――と云うてみたところで、将軍家には、誰より、お気に入りの出羽守のこと。どうも、なるまい』
まったく何うにもならない事に違いなかった。現状の柳営では、五人の老中の言葉よりも、出羽守の一顰一笑の方が、御表をも、大奥をも、左右している有様だし、将軍家に至っては、まるで彼の操る糸のままに感情があらわされる。
その出羽守と上野介とが、私交上でも役儀上でも、かなり親密な仲だということは、衆知のことだった。処世も人生観も、こう二人は完全に一致するところがある。上野介の倨傲な日ごろの振舞も吉保という重要な地位にある人間の後楯を意識して、特に、横着ぶりを、押している風もかなり見える。
(この一事だけではない。思えば、柳営の紊れは久しい。私閥のばっこだ。将来の御政道にとって、おもしろくない事だ)