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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

心の底から揺りあげる感謝の念に、瞼を熱くした者もある。

すると――その声が止むと程なく、納戸方の小侍を指図して、いつもに変らない柔和な顔をにこにこさせながら伝右衛門がそこへ入って来て、

『そこへ一つ。……そうじゃ、その辺へも一つ』

と、火鉢のすえ場所を指図するのであった。

金網のかかっている大きな唐金の火鉢である。それまで、この広い上之間と下之間に、火の気はなかったのである。そこへ幾つかの火鉢が配られて、伝右は、自分も共に温かくなったように、ほっとしていた。

――四、五日前、下之間にいる富森助右衛門が、

(内蔵助殿は、ああして居られますが、冬はとても寒がり坊なので――)

と、雑談のうちに、伝右衛門へ話したことから、こう成ったのであろうと、人々はよけいに済まなく思った。炭火の赤さよりも、伝右衛門の情に、胸が熱くなった。

『そうじゃ、よい思案がある』

伝右衛門は、又独り合点して、紅殻染の小蒲団を何枚も持って来させ、金網火鉢の上へ、炬燵のようにして懸けてくれた。そして、

『これで、夜に入っても、霙が降っても、いくらかはおしのぎようござりましょう』

と、呟いて、ちらと、上之間の正面に坐っている内蔵助のほうへ向い、