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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

いいではありませぬか、いっそ、御披露しておしまいなされ』

と、伝右衛門もからかいに入る。

『云いましょうかの』

源五へ向って、十郎左は、本気になって、

『おやめなされ、意地のわるい』

『でも、拙者が嘘つきになっては困る』

『あいや、源五どの、この伝右衛門は、ぜひ聞きたい。いったい、美男の十郎左が、寝言に云われたというその寝言は、どんな言葉でござったのか』

『それはな、伝右どの、……女の名を、この十郎左が』

十郎左は、顔を紅くして、

『およしなされ! 左様な事! きっとそれは母の名でも』

『いやいや、母御のとは、違うていたが』

内蔵助が、こっちを眺めて、にやりとしている。十郎左は堪りかねて、赤埴源蔵のうしろへ隠れてしまう。

――そんな事もあったりしたが……。

一月は瞬く間に過ぎた。二月に入ってすぐの二日の晩の事であった。

何かの用事で、ちらと伝右衛門が姿を見せると、珍らしく、内蔵助のほうから呼び止めるのである。――それもいつになく、明るい声で。

見ると、酒が出ている。睦じく寄り集まっているのだった。酒の飲めない赤埴源蔵だの、吉田忠左衛門だの、小野寺や間瀬などの甘党は、やはり杯で「甘みぞれ」