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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

蒲団のなかにいるものが、クスクス笑いを洩らすと、次には、どっとみんなで笑ってしまう。伝右衛門も腹の皮がよれた。涙をこぼして笑い転けた。

十郎左が、この間の仇をとるつもりで、蒲団の中から首を揚げ、

『いつまでも寝ないで、困った大人共でござる。伝右どの、その手輩に、あしたは糺明しておやりなされ』

『畏まってござる。したが、其許が又、後しっぺ返しに、寝言の件を云われはしませぬかな』

『やあ、あの事はもう……』

十郎左は蒲団を被ってしまう。

『はははは、お寝みなされ』

『おやすみ』

『伝右どのおやすみ……』

ひとり残らず云って、そこの灯は、やがて消えた。

死なき生命

つかれが出た。四日の午迄のうちにはまだ何の気ぶりもなかったので――この間にと、伝右衛門は、自宅へ帰っての一眠りを思って、いつもの騎馬で町へ出た。

町の者はまだ、幕廷の内意を知らない。それの分っている伝右衛門には、二月の昼も、うつつな気持であった。

京橋に近い自宅がそこに見えた頃である。後から迅い蹄の音が飛んで来た。はっと思って振向くと、同僚の林平六が騎馬で、

『伝右どの、すぐ返せ! 御上使、御上使』

『やっ、お邸へ』