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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
それも、金策だった。
さし当って、もう内蔵助の手元には、金は乏しかった。ぼつぼつと江戸表へ下向する同志たちのうちにも、路銀はおろか、旅支度にさえ事を欠く者がたくさんある。赤穂開城の時の手当は、もう誰の手元にも、とうから乾いていた。
内蔵助の手元にあった準備の金も、玄渓の病家先の絹屋弥兵衛という者に、討入装束として着用する鉢金頭巾や、着込、羽織、その他を註文して、それも悉皆出来あがったので、すべて手元を空にして支払ってしまっている。
で、思いついた一策なのだ。
内蔵助の遠縁にあたる者が、近衛家の諸大夫を勤めている。その人は進藤筑後守長富という。これへ宛てて、金子百両の借り入れ方を、玄渓の弟子に、手紙と抵当物を持たせて、申し込んだのであった。
抵当の品物というのは、封印してある長持が一棹であった。中には、内蔵助が、心を籠めて入れた品が充ちているのであったが、程なく、その使の者が帰って来ていうには、
『折角のお頼みではござるが、唯今、進藤家にも、他にさし迫る失費の儀があって、折角ながらお手紙の趣きには添いかねる――と、かような御返事でござりました』
とある。