轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

矢風刃風

『おわかれだ……』

『ウム』

片膝を落して、丈八が茶碗を受けた時である。バラバラバラバラッと、窓や入口の雨戸へ大きな雹でも打つかるような音がした。

外から半弓を射かけているのである。ブス、ブスッと、雨戸を突き抜く鏃の先が、白い星のように幾つも光って見える。

一学は袴の股立を高く絡げ、襷鉢巻をして、戸へ近づいたが、

『あぶない! これを被って出ろっ』

と、丈八が後から女の小袖を抛った。

女気のない一学の家の押入に、そんな小袖があるのを知っていたのも丈八だけだった。今は世を去って亡い一学の妻の花嫁着物だった。

『辱けない』

一学は、裲襠を頭から被った。黴のにおいの中に、連れ添って二年目に、産後で死んだ若い妻の残り香が、ふと顔をくるんだ。

(妻も、亡母も、おれを待ちわびているとみえる。見ておれ、清水一学の死出の働きを)

こう念じながら、戸に手をかけた。

浅野浪人のうちでも、誰か主だった年長者の声らしく、矢たけびの戸外にあたって、頻りと、こう云っている言葉が、丈八にも一学にも聞えていたのである。

『女子供は討つな。女どもは、逃げるにまかせい』

矢音が止んだ瞬間に、一学はがらりとそこを開けて躍り出ていた。