轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页

青空文庫

内蔵助の最後の声を聞くこともできた。

やがて、時刻は来た。――上使、検使の顔が仮面みたいに引き緊まる。邸内はしいんと大寺のように密まってしまう。唾をのむ自分の咽喉の音が聞えるのである。――と、庭先から第一の死の迎えの声がひびいた。

『――大石内蔵助殿! おいでなされ!』

ついと立つ影が白と浅黄の中から見えた。ふわりと一つのものから離れてゆく同体の一部としか見えない。刹那その人は人間か何うか疑われた。何となく、人間以上なものに、この世に残る人間には見えた。

真夜中よりもひっそりした一瞬が来た。礼儀を終った内蔵助の姿が、白い屏風のかげになったと思われた途端である――ぎゅっと、人々の胸さきへ痛い動悸がつき上げたのである。――異様な音は、その時、耳をつよく打った。

ばすんッ――と刃鳴りが空気を揺すったのだ。と思うと、人々の面を、さっと青白いものが掠めて、口の中が熱く渇いた。

『――内蔵助殿、お仕舞いなされました。――吉田忠左衛門殿! おいでなされ』

役人の声も、前よりは干乾びている。

次々に、名が呼ばれてゆく。

ゆうべおどけて踊った大石瀬左衛門の名も。あの女にも見ま欲しい二十四歳の磯貝十郎左の名も。