轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
一学も笠を高く上げた。
姪だの、甥だの、従兄弟だの、田にいる者は皆、何かの縁でつながる人達だった。吉良家という一つの家長の下にいるこの善良な家族たちの為にも、彼は、自分の為すべき任務を感じるのだった。
その吉良家累代の菩提所である華蔵寺の下にかかると、二人は笠を脱って、石段へ礼をした。一学には、わけて思い出の深い寺なのである。
彼がまだ、とんぼ頭をして、蝉捕りに夢中になって夏を真っ黒に遊び暮していた少年の頃、よくこの寺へ避暑がてら来ていた貴人がある。領主の吉良上野介夫妻であった。
上野介は吉良家の初祖と、中興の祖と、自分との三つの像をその頃作らせて、此寺に納める宿願を立てていた。中央にある彼という人間と、郷里に帰ってこうしている時のかれとは、まったく別人の観があった。その上野介が、いつ見知ったのか、よく境内や裏山を駈けずり廻っている「四郎ッぺ」に眼をつけて、
(あの小僧、見どころがある。江戸へ連れて行きたいが)
と住職に洩らした。
村の四郎ッぺが、侍になったのは、それが動機であった。清水一学となってから、これで四度目の帰郷であるが、或は、これが最後かも知れないような気がどこかでする。