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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
ははは』
それとなく、急所へ、一当て当てて見たつもりであったが、内匠頭には、手応えもなかった。ただ真面目に、熱心に、
『いや、御老中方よりも、吉良殿のお心得を仰げと、お口添えのあった事にもござります。若年者、おうるさく、思召されましょうが、おひき廻しの程、平に、願わしゅう存じます』
『…………』
上野介は、身を捻って、不作法に、血管の太く這っている皺だらけな手を文庫へ伸ばしていた。相手の熱意を、わざと外らしている風にも受けとれないことはない。
内匠頭は、重ねて、
『さし当って、何か、仰せ付け下さる儀はござるまいか。通例の柳営行事にさえ、まだ心得のうとい私へ、何事なりと、御遠慮なく』
『公儀のお勤めじゃ。遠慮などはせん。――さて、さし当ってといえば、まずこれでも見て置かれい』
文庫から出して示したのは、勅使下向の日程書であった。こういう順序に書いてある。
十一日 勅使ならびに院使、江戸御着、御旅舎、辰ノ口伝奏屋敷
十二日 両使登城、御物を賜ぶ
十三日 猿楽御見物。諸侯陪観
十四日 白木書院にて、将軍家奉答
十五日 上野寛永寺、芝増上寺、御参詣
十六日 休息
十七日 御帰洛