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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
『源吾どのは』
『留守でござる』
『各※(二の字点、1-2-22)は』
『何か御用か』
『山科からの急なお言伝を、手わけして告げて歩いておる』
『ご苦労な』
にべもない。
然し、三太夫は、気にかけず、ずかずかと上って来た。もう蝉の声がする暑さであるが、ぴたりと、障子を閉め、
『御両所、ちと、お耳を』
と改まった。
全然、聞く気のない顔つきである。然し、三太夫がものを云い出すと、二人共、愕然と気色を改めた。
今朝、山科へ、江戸表から急状がとどいたと云うのだ。それによると、内蔵助が、心待ちにし、又、遠林寺の祐海の運動をも、密かにたのんで、待ちに待っている先君内匠頭の舎弟大学の取立ての事は、果然、絶望と、はっきりきまった。
江戸表の吉田忠左衛門、奥田孫太夫、ふたりの書面には、大学長広は、その後、わずか唯一つの住居として取り残されてあった木挽町の屋敷も召上げられ、芸州広島へ左遷という報告なのだ。……左遷である。もう、主家再興の望みは完全に断たれたのだ。
『――で、内蔵助殿のいわるるには、これ迄と、一言仰せ。幾度か、各※(二の字点、1-2-22)へ向って、お誓いの如く、復讐の一途と、肚はすえられた』