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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
ひとりはそこを盗っ人猫のように出て、塀のみねから外の大溝へ飛び込み、往来の筋向いにあたる傘屋三右衛門の裏へかくれた。
何っ方も六十がらみの老人であったし、一方は髪が白かったので、武林唯七が、吉良と見ちがえたのであったが、すぐ後で、それは吉良家の家老左右田孫兵衛に斎藤宮内と知れ、
『いらざる手間を取った』
と、各※(二の字点、1-2-22)舌打してつぶやきながら、更に、
『上野介は何処に?』
手分けをして奥へ駈け入った。
そして唯七が、嫡子左兵衛佐の居間へ一歩踏み込もうとした時だった。いきなり青貝柄の長刀を揮って、
『――誰だっ』
と、斬りつけて来た十三四歳の少年がある。それが、頭を青く剃っている愛くるしい小坊主なので、唯七は何かしら、
『――あっ』
と、気押されて、身を退くと、少年は、小さな体に持ち余るほどの長刀を、
『畜生、畜生っ』
心の底から怒っている顔つきで、縦横無尽に振って来るのだった。これは常々、上野介や家中の者から、
(春斎、春斎)
と、いい玩具のように愛されていた牧野春斎という茶坊主の見習だった。
討って手功になるものではなし、不愍――と思ったので、唯七が、