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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
「日の出」1935(昭和10)年1月号~1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 页
そこへ蜜柑箱の中へ、餅を交ぜ入れて担いで来た男があった。近松勘六の下男の甚三郎だった。
『よく気づいた』
勘六が賞めて、餅と蜜柑をみなの手に頌けた。
雪の中に、蜜柑の皮は、真っ黄いろに散らかった。たった今、あのすさまじい戦刃の中で、血を浴びて来た人達とはどうしても見えないのである。主税だの、助右衛門だの、右衛門七だの、若い連中はもう冗談を云って笑いぬいているのだった。
空が白んでくるにつれて、各の小袖や武器についている血潮が生々と眼に映って来た。
内蔵助は、一同へ、
『槍の者は、袖じるしを裂いて、槍の穂をつつんだがよい』
と、注意した。
もう大通りの辻には、いつのまにか、真っ黒な人だかりだった。近づいて来る者はないのである。ただ、遠方から此方の人数をながめて、がやがや噪いでいる無数の眼の驚き方がわかる。
『上杉家も襲って来ぬらしい』
忠左衛門がつぶやくと、
『千坂が居るぞ』
と、内蔵助は、低声で云った。
然し、他の人々はまだ、決して、安心しなかった。上杉家ばかりでなく、吉良家から追討を襲けるという手もある。
そのうちに、堀部老人の甥の九十郎だの、内蔵助の遠縁にあたる大石三平だの、又、剣道家の堀内源太左衛門などが、二、三の門人を連れて、