Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
「どっちだ。その侍の逃げた方は」
「あっちだ」
指さしたのも、いい加減であったが、それっと、大勢が駈け出すとすぐ、ここにいた、ここにいたと、先で叫ぶ者がある。
提燈や棒が駈け集まってみると――朱実はしどけない姿を農家の藁小屋らしい陰に曝していた。その辺に積んである乾草の上に押し仆されていたものとみえ、人の跫音に驚いて、髪も着物も、わらや乾草だらけになって、起き上がっていたが、襟はひらいているし、帯はだらりと解けている――
「まあ、どうしたのじゃ」
提燈の明りに、それを見た人々は、すぐ或る犯行を直感したが、さすがに、口へいい出す者もなく、犯行者の牢人者を追うことも忘れていた。
「……さ、お帰り」
手をひくと、その手を払って、彼女は小屋の羽目へ顔を当てたまま、よよと、声をあげて、泣きじゃくった。
「酔っているらしいね」
「何でまた、戸外で酒など?」
人々は、しばらく、彼女の泣くにまかせて、見まもっていた。
城太郎も、遠くからその様子を覗いていた。彼女がどんな目に遭ったのか、彼にははっきり頭に描くことはできなかったが、彼はふと、朱実とはまるで縁のない過去の或る体験を思いだしていた。