Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
六
野に育った伊織は、母の膝に抱かれていた頃から、狐は人を化かすものだという実話を沢山に聞かされていた。野猪の子でも兎でもむささびでも愛すことが出来たが、狐だけは憎かった、また、怖かった。
――だから今、草むらの中に居眠りしていた狐を見つけると、彼は、とたんに、道に迷っている自分が、偶然でない気がした。こいつに誑かされているのだと考えたのである。――否、すでに昨夜から、この狐が、自分のうしろに憑き纏っていたに違いないという気持さえ咄嗟に起った。
忌々しいやつ。
殺してしまわないとまた祟る。
そう思ったから伊織はどこまでも追いかけたのであったが、狐の影は、忽ち、雑木の生い茂った崖へ跳びこんでしまった。
――だが伊織は、狡智に長けた狐のことだから、そう人間の眼には見せて、実は自分の後ろにかくれておりはしないかと、そこらの草むらを、足で蹴ちらしながら、詮議してみた。
草にはもう夕露があった。赤まんまとよぶ草にも、ほたる草の花にも露があった。伊織は、へなへなと坐りこんで、薄荷草の露を舐めた。口が渇いてたまらなかったのである。
それから――彼はようやく肩で息をつきはじめた。