Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
七
サクリ、サクリと彫刀の鋭利な先で木を削いでゆくのが微かに雪の積むほどにひびく。
武蔵はまったく彫刀の先に没しきっていた。彼の性情はなにへ対しても、一度それに向うと直ちに没頭しきってしまう。今――刀を把って観音像を彫りにかかっているのを見ても、体がへとへとになりはしないかと思われるような情熱に燃えきっている。
「…………」
口のうちで唱えていた観音経の声が、我を忘れて次第に大きな声になってゆく、気がつくと急に声を落し、また、燭を剪っては、一刀三礼のこころを像に向って凝らした。
「……ウム、どうやら」
背を伸ばした時は、東塔の大梵鐘が、二更を報じていた。
「そうだ、挨拶もせねばならぬし、この像も、今宵のうちに、住持におねがいしておこう」
ざっとした荒彫りではあった。けれど武蔵にとっては、自分のたましいを打ちこめ、慚愧の涙をもって、亡き一少年の冥福を祈りつつ彫りあげたものなのである。それを寺に遺しておいて、永く、自分の憂愁とともに、源次郎の霊を弔ってもらおうと発願したものであった。
で。――彼は彫り上げたそれを持って、やがて部屋を出て行った。
彼が去ると間もなく、入れ違いに稚児僧がはいって来て、部屋の中の塵を箒で掃き出した。