Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 508.883 caratteri · 1017 schermate
七
七
「伝七郎っ……」
夜具の中から伸びた片手は、弟の腕くびをつよく握った。病人の力は、健康な者にも痛かった。
「お……と、と、と、兄貴、酒がこぼれる」
握られた手の杯を、伝七郎はあわてて持ちかえながら、
「なんです、改まって」
「――弟、おまえに望み通りこの道場を譲ろう。だが、道場を継ぐことは、同時に家名を継ぐことであるぞ」
「よろしい、ひき受けましょう」
「そう無造作にいってくれるな――おれの轍をふんで、ふたたび亡父の名を汚すようでは、今つぶした方がいい」
「馬鹿なことを仰っしゃい。伝七郎はあなたとは違う」
「心を入れかえてやってくれるか」
「待ってくれ、酒はやめませんぞ、酒だけは」
「よかろう、酒も程には。……わしが過ったのは、酒のせいではない」
「女でしょう。――女ずきはあなたのいけないところだ。こんど体が癒ったら、もう決まった妻をお持ちなさい」
「いや、この機会にわしはすっぱりと剣を捨てた、妻など持とうという気持もない。――ただ一人救ってやらなければならない人間がある。その者の幸福になるのを見届けたら、もう望みはない。野末に茅の屋根を結んで果てるつもりじゃ……」